黄昏の特等席
 彼はいつだって優しくしてくれる。それは何かの利益のためにしていることでないことはわかる。

「・・・・・・わからないか?」
「教えてよ・・・・・・」
「そりゃあ、大切な女だからな。優しくしたくなるさ」

 苦しんでばかりいるグレイスを見るのは嫌だから、エメラルドは力になりたいことをグレイスに言った。

「アクア・・・・・・」
「はい」
「私と一緒にいるときくらい、力を抜いたらいい」

 無理をしてしまうと、また前のように倒れてしまう恐れがあるから。

「何も怠惰でいるように言っていない。頑張っているアクアも好きだ。だからこそ、無理をしてほしくないんだ」
「あっ・・・・・・」

 目を閉じているエメラルドが顔を近づけ、グレイスの唇と重ねる。
 驚いたグレイスが半歩後ろに下がろうとすると、エメラルドの腕がグレイスに絡まり、さらに引き寄せる。引き寄せられて、熱と痺れを感じているグレイスは抵抗できなくなり、彼と同じように目を閉じた。
 互いの唇が離れたときに甘い吐息が零れ、エメラルドは目を潤ませているグレイスを覗き込んでいる。

「目を逸らすことないだろ?」
「だって、急に・・・・・・」
 
 自分は今、どんな顔をしているのだろう。

「君が悪い・・・・・・」
「どうしてよ?」
「そりゃあ・・・・・・」
< 122 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop