黄昏の特等席
 グレイスが可愛いのが悪いのだと言い張り、謝罪まで要求してきた。

「私、可愛い顔になっていた?」
「他にも可愛いところがある」

 グレイスにわかりやすく言おうとしたので、エメラルドに言わないように頼んだ。

「悪く言われるのがいいのか?」
「ううん、そうじゃないの・・・・・・」

 そんなことをグレイスは望んでいない。悪く言われて傷つくのはグレイスも同じ。

「そうじゃなくて・・・・・・」
「じゃあ、照れているのか?」
「それは・・・・・・」

 どんなに否定したくても否定することができなかった。
 だけど肯定することも躊躇いがあるので、思い切って別の話をすることにした。
 グレイスが風邪を引いたので、休日を潰してしまった。そのことをエメラルドに謝ると、気にしなくていいことを言った。

「結局、どこへ連れて行こうとしていたの?」
「あちこちだな」
「行ったことがある場所?」
「まあな・・・・・・」

 以前にグレイスを気に入りそうな場所へ連れて行きたかったことをエメラルドが教えてくれたものの、体調を崩したので、それが駄目になってしまった。
 グレイスが気になっていると、エメラルドは次の機会まで内緒にすることにした。

「次の休みってこと?」
「・・・・・・気が変わった」

 数ヶ月先になってから連れて行くことを告げられ、グレイスはそれに対して黙っていることができなかった。
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