黄昏の特等席
「エメラルドが乗った船の部屋は広かった?」
「まあまあだな」

 この屋敷の部屋が広いことを言って、グレイスは自分の部屋を思い出した。
 以前の部屋より今使っている部屋が少し広い。

「あなたの部屋の広さはどれくらいなの?」
「まだ部屋に入ったことがなかったな・・・・・・」
「そうだよ」

 グレイスは今まで一度もエメラルドの部屋に行ったことがない。
 どれくらいの広さなのか、どんなものが置いてあるのか、部屋でどのように過ごしているのか、全く知らずにいる。

「君の部屋とそんなに変わりはないな」
「そうなの」

 好奇心で部屋のことについて詳細を知りたがると、エメラルドは部屋にいつか招待することを言ってくれた。

「本当?」
「もちろんだ」

 口で説明するより実際に目で見たら、どんなものがあるのかすぐにわかる。

「ただし・・・・・・」
「何?」

 何か条件でも出そうとしている感じなので、笑みを消した。

「部屋に一歩でも入った場合、私が満足するまで君を帰さないから」
「じゃあいい・・・・・・」
「残念だな・・・・・・」

 そんなことを言われたら、興味があっても室内を見ることができない。

「話が変わるが、いいか?」
「どうぞ」

 これ以上部屋の話を伸ばしても、何の得にもならないだろう。

「近くに専門店が新しくできたようだ」
「そうなの? 食べ物?」
「ああ。なかなか評判が良いようだ」
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