黄昏の特等席
毛布と布団
「あ・・・・・・」
「あ!」

 漏らした声に反応した男は振り向いて、グレイスに笑いかけた。

「散歩ですか? お嬢様」
「はい。そうなんです」

 彼の名前はラッド=リーランド。シェリダン家の使用人で、グレイスと仲良しになった。
 一週間前も偶然彼に会い、そのときに薔薇をもらった。

「薔薇、ありがとうございました」
「いえ。そうだ、先日の話の続きをしましょうか」
「お願いします」

 先日、薔薇の話をしようとしたとき、仕事の先輩が来たので、グレイスは彼から話を聞くことができなかった。
 しかし、今日は違う。ラッドは薔薇について話を聞かせてくれた。
 薔薇の色や形によって、花言葉の意味がそれぞれ違うことや薔薇が化粧品やハンドソープなどに使われること。

「ラッドさん、小さい頃から薔薇を育てているのですか?」
「いいえ、お嬢様くらいからですね」

 彼の友達の姉と仲良しで、彼女から薔薇の育て方を教わった。

「そうだったんですね」
「はい」

 グレイスに微笑みかけながら、家のことを思い出していた。

「私は十三歳ですけれど、薔薇を育てたことはないですね」
「じゅ・・・・・・?」

 ラッドに声が届かなかったのだと思い、グレイスは自分の年齢を再度教えた。

「私、十三歳です」

 それを聞いて、驚いたラッドは数秒口を開けていた。
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