黄昏の特等席
「てっきり十七歳くらいかと思いました・・・・・・」
「ときどき実際の年齢より上に見られるんです」

 グレイスの容姿や雰囲気、声などで周囲の人達は勘違いをする。

「もっと大人になったら、老けて見えるかもしれません・・・・・・」
「未来のお嬢様は今より美しくなっているのでしょうね」
「そんなことないです」
「そんなことありますよ」

 そう思うと、未来のグレイスを見ることがちょっと楽しみだ。

「私が大人になっても、こうして会ってお話を聞かせてくれますか?」
「はい。もちろんです」

 グレイスとラッドは互いの小指を絡ませて、約束を交わした。
 離れていく温もりを求めて、自分の手より少しだけ大きい手を取ろうとしたとき、手が壁に当たって、我に返った。
 グレイスがいる場所はベッドの上で、顔を洗いに行こうとしていたことを思い出した。

「約束・・・・・・」

 自分の手を見つめて、握り拳を作ると、目覚まし時計の音が鳴り響いた。

「今日も仕事、頑張らないと・・・・・・」

 自分に言い聞かせて、ぼんやりする頭を軽く振り、洗面所へ向かった。
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