黄昏の特等席
「仕事をしていたら、体温が上がる・・・・・・」

 図書室での仕事は一般的に知的・精神的労働をイメージされるものの、実際に働いて、肉体的労働な面も多くあることを実感する。

「時間がかかるだろう」
「問題ないから・・・・・・」
「こうすればいい・・・・・・」

 俯いていると、大きな靴が近づいてきたのが見えたので、顔を上げた。
 両手を広げて、エメラルドに抱きしめられたので、必死に暴れて、その腕から抜け出そうとする。

「いきなり何を!」
「私も寒いんだ」

 グレイスを抱きしめると、小さくてすっぽりと入るので、大人びた雰囲気が消され、どこか幼さを感じる。
 さっきまで暴れていたグレイスはエメラルドが抱きしめるだけで、それ以外に何もしないことを悟り、徐々に力を抜いた。
 大人しくしていると、髪を撫でられて、そのまま髪にキスまでされていた。

「やっ!」
「抵抗しなくなったから、していいものだと思ったのだが、違ったかな?」
「違う。離れて」

 グレイスが彼の胸を押すと、踏ん張ることなく離れてくれた。
 エメラルドはもう少しグレイスの体温を感じていたかったので、少し不機嫌になっている。

「どうしてすぐに機嫌を損ねるの?」
「君のせいだよ」

 そんなことを言われても、正直困ってしまう。
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