恋するリスク
タクシーからなんとか私を降ろした佐藤くんは、一旦、マンションの入り口にあるレンガの上に私を座らせると、「はい」と言ってしゃがみこんだ。

「・・・?」

いまだ頭の回転がほぼ停止状態の私は、目の前にある広い背中をボーっと眺める。

「こっちの方が早いので、乗ってください。」


(へ?)


姿勢を変えずに後ろに手を回すと、佐藤くんは自分の背中をポンポンとたたく。

どうやら、私をおぶって部屋まで連れて行ってくれるつもりのようだ。

朦朧としながらも取り戻した冷静な感情は、恥ずかしさで私の顔を熱くさせる。

「・・・大丈夫だよ。歩けるから。」

そう言って一歩踏み出すものの、「きゃっ」とレンガの継ぎ目で転びそうになる。

すぐさま、振り向いた佐藤くんが支えてくれたけど、「無理ですよ」と言われ、私は再びレンガの上に座らされた。

「おとなしく乗ってください。」

彼はもう一度、私の前にしゃがみこむ。

どうしよう・・・と悩みつつも、あまり考えることが出来ない私は、その背中に、もう甘えてしまおうと腹をくくった。

「うん・・・。ごめんね。」

大人になってから、酔っ払って人におぶってもらうなんて。

スーツ、汚しちゃったらどうしよう。






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