恋するリスク
恥ずかしさで何と言っていいかわからず、私はもごもごと口ごもる。

「全然。気にしないでください。」

そう言って笑うと、佐藤くんはカバンを持って立ち去ろうとする。

「で、でもっ・・・!」

引き留めようと手を伸ばした時、スーツのジャケットが所々汚れているのに気がついた。

「ご、ごめん・・・!これ、私が汚したんだよね?」

この汚れは絶対、私がつけた涙や鼻水に違いない。

「クリーニング!出すから・・・!」

私はスーツの裾をぎゅっとつかむ。

「いえ。ちょうど出そうと思ってたところだし。

藤崎さんは気にしなくていいですよ。」

「でも・・・。」

スーツだけじゃなくて、他にもいろいろ迷惑かけたのに。

このまま何もしないというのは、申し訳なくてたまらない。

考え込む私を見下ろす佐藤くんは、「それなら」と言って話を切り出す。

「オレ的には本当に、全然いいんですけど。

藤崎さんが気になるなら・・・今度、一日デートしてください。」

「え?」

思いがけない申し出に、私は驚いて聞き返す。

「あ・・・いえ、すいません。

ちょっと調子乗りすぎたかな・・・。」


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