恋するリスク
トンネルを抜け、小さな水槽が左右に並ぶゾーンを通り過ぎると、クラゲたちが集う場所へとやってきた。

暗闇に浮かぶ、半透明の生き物たち。

演出のために施された最小限の光の中で、ふわりふわりとやわらかい体を躍らせている。

「わ、キレイ。」

私は思わず声を出す。

黒に近いダークブルーのような、幻想的な空間。

それはまるで、異世界に迷い込んでしまったような感覚。

そんな思いで私がクラゲを見ていると、佐藤くんは水槽を見ながら話し出す。

「不思議ですね。なんか、非現実的な感じがする。」

同じような感想を抱いていたことに、私は少し、うれしくなる。

「うん・・・。」

返事をして、チラリと隣を見上げた。

暗がりで見る佐藤くんの横顔は、やけにキレイで・・・かっこいい。

また、震えるように胸が鳴る。

どうしようもなく落ち着かなくて、私は一人でクラゲゾーンを歩き出す。

不思議な生き物に夢中なフリをして、なんとか気を紛らわせた。



< 90 / 174 >

この作品をシェア

pagetop