恋愛遭難★恋は水もの〜パツンと教訓!〜
「山田、気にするな。神島の事は忘れろ。俺が忘れさせてやる」
ーーー忘れるも何も……。
ギュッと抱きしめられていた。街灯のついた歩道。通りがかりの人の好奇な視線が突き刺さってくる。
ーーーうっ、セクハラ。
「離して下……さい!」
「わかった。なあ、山田」
やっと、解放された私はホッと息を吐いた。
「なんですか?」
「神島のどこがいいんだ?」
「え? えっと……」
ーーーしつこいな。神島課長の存在にスッポンみたいに食いついてくる。
私は神島課長を思い浮かべてみた。
「顔。笑顔ですよ」
「顔? あののっぺりした顔が好みか?」
そんな失礼な事を言う上野課長を眺めた。
ーーー濃い。上野課長は、アラブ人みたいに顔が濃い。自分こそ、色の薄いインド人と言われても仕方ないくらいの顔じゃん。
ま、これじゃあ、大概の日本人をのっぺり顔だと思うのも頷ける。
「私、薄い顔が好きなので」
「薄いというか……お前は、悪趣味だな」
「あの、人の好みなんか放っておいて下さいよ」
「そうはいかないだろ。お前の好みを俺に変えるんだからな」
私の目の前にいる男は、余裕の笑顔さえ浮かべている。
「本気ですか? なかなか人の気持ちは変えられませんよ?」
「そうか?」課長が私の手を掴んだ。掴んだ私の手を自分の口元に近づける。
ーーーな、なんなの?
私の顔を見ながら、近づけた手にキスをする課長。
「か、課長!」
「なんだよ、ユイカ」
ーーーユイカ? なんで私の名前を呼びすてにするのよ!