不良リーダーの懸命なる愛

匿名

キーンコーンカーンコーン





「今日の試験はこれまでだ。じゃあ解散!」


HRもそこそこに、先生が早くきりあげてくれた。




「はぁ~!初日からキツかったあぁーー!!虫に、古すぎてついていけない日記に、カタカナのオンパレード……。おぇ。」


「千枝ちゃん大丈夫?!吐きそうなら保健室に……!!」


確かに範囲が広かったから結構難しかったよね、生物と古文と世界史……。


「でも、明日はちーちゃんの得意な現代文があるじゃない!良かったよね!」


「そうだった!明日はちゃんとした日本語がある!!あ!それと今回は英語も時間を割いて勉強してるから、いいせんいけばいんだけどな~。それだけが望みだよ、今のあたしにゃ。」


「………英語。」


「あ、そっか!咲希は英語苦手って言ってたっけ!でも今回、単語の意味とかアクセントとか出るって言ってたから、まずそこよね!」


「…………え?う、うん。」





英語か……。





「あ!私、部室覗いてから帰るね。朝ちょっと描いたから、画の乾き具合が気になっちゃって!」


「そっか!唯ちゃん美術部だもんね~。画にかける情熱……、あたしの陸上にかける情熱と同じだゎ!!ま、今回は残念だったけど……。」


ちなみに、ちーちゃんは今回の大会のメンバーには選ばれなくて、他の一年生が選抜されてしまった。


「で、でも!千枝ちゃん一年生なのに凄いよ!!その子と僅差だったんでしょ!?これからだよ!」


「そうだよ!ちーちゃんは一番速いんだから!!絶対次は選ばれる!!それは誰より私がよく知ってるもん!!」


「唯ちゃん……咲希………。」


ちーちゃんが目を潤ませて、私達を見つめてきた!


「うわああぁぁん!!めっちゃ悔しいよおぉぉ~~~。今度は叩き潰すよぉぉ~~!こんちくしょーー!!ポッと出のチャラチャラ女があぁ!!何が最新のシューズだよ!!あたしも欲しいぃーーーーー!!」



ちーちゃん……。



それって単に羨ましいんじゃ…。



「千枝ちゃん頑張って!!勝負は最後までわからないんだから!!!」



勝負。


最後までわからない。




その時、私は笹原さんの事が頭に浮かんだ!


笹原さん……に、私は結局負けたのかな。


どうなんだろ…。


といっても、あれは勝負でもなんでもなかった気がする。


それに、やる前から霧島くんに別れを告げられた訳だし。




今朝は下駄箱にはゴミは無かった。


だから結局は、彼女が提示した、嫌われるという条件をのんだことになったんだと思う。


「財閥だか何だか知らないけどさぁ~、ずびっ!あたしの陸上にかける思いにはさぁ~、ふがっ!!勝てないんだよおぉ~~~!!ッヘックショイ!!」



ちーちゃん……。




ちーちゃんの鼻水は凄いことになってたけど、彼女の陸上への情熱や思いが伝わってきた。


例え負けても、純粋に勝ちたいと願うちーちゃんに、私は少し羨ましく思ってしまった…。








ちーちゃんと唯ちゃんは部室へ寄ってから帰るということで、
私は一人、下駄箱までやってきた。


「忘れものはないよね?現代文、数学、英語……。」


最後に荷物をチェックして、下駄箱を開ける。




「ん?これは……。」





そこには見覚えのあるローファーが、私の下駄箱の中にキレイに置かれていた!


中には小さい紙切れが入っている!



なんだろう??




《間違えて履いてしまいました。お返しします》




小さな紙にはそう書かれていた。



え!?



ということは、


この靴……………………私の!!?


その靴をよく見てみると、裏の踵部分に、 “なるせ” と小さい文字で書かれていた!



「やっぱり私の!でも、いったい誰が……?」



メモをもう一度見る。


凄く達筆な綺麗な字で、書かれている!


やっぱり私のローファー履き間違えたということは、女子だよね?



でも、それにしてはこの字………。



本当に女の子が書いたのかな??丸文字というイメージがあるからかな?


なんか違和感が……。



「でも、戻ってきて良かった!」



履いてみると、ピッタリと自分の足におさまる!



……あれ?




「でも、気のせいかな……?前よりも綺麗になってる??」


履いてみてまた違和感が。


ピカッと光沢が出ている……?




???




「……もしかして間違えて履いちゃったから、気を遣って磨いてくれたのかな?!凄く几帳面な人なんだなぁ~。」


私は履いて来たスニーカーは下駄箱に置いて、
今日はそのローファーで帰った。



この小さなメモと一緒に。
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