現代のシンデレラになる方法
院内の売店で、1日分の野菜がとれるとかいうパックの野菜ジュースを買おうと手にする。
これはいつもの習慣だった。
が、あの子からお弁当をもらっていたことを思い出してまた戻す。
あれから、ちょこちょこ弁当を差し入れてくれるようになった。
おかげさまでなんだか体の調子もいい気がする。
俺は今まで、ろくに人の手料理を食べてこなかった。
料理嫌いの母親は、いつも高級スーパーで買った惣菜や出前などで済ますことが多かったからだ。
だからか、彼女の手作り弁当はとても暖かく感じられた。
人の手作りってこんなにいいものなのか、と初めて思った。
そして幼いうちに好き嫌いを克服してこなかったからか、この年になってもまだ食べられないものがある。
例えば、納豆、レバー、ピーマンなど。
毎回レパートリーが豊富で彩り豊かに作られる弁当だが、目に見えて苦手なものが入っていると残してしまっていた。
申し訳ない気もするが、彼女の見えないところで捨てるということもできない。
それに察して、彼女はその具材を入れないようになった。
もちろん、俺を気遣ってのことだとは思うが。
しかし彼女はそれだけではなく、残すという俺の罪悪感にさえ気遣ってくれていそうだ。
午後2件目のOPEが長引いて、外はもう真っ暗。
時間は夜の9時を回っていた。
さっさと帰ろうと更衣室に向かう。
その途中、この時間に珍しく休憩室の電気がついていた。
ちらっと見ると、そこには相澤がいた。
「え?まだ残ってんの?」
「あ、お、お疲れ様です……っ」
相澤は休憩室のテーブルを拭いているところだった。
「まさかここの雑用やらされてんの?」
「い、いや、コーヒーカップを片付けたり、洗い物をしたり…」
「そういうのを雑用っていうと思うんだけど。何?事務長に言われた訳?」
「は、はい」
「はぁー、あんたも少しは断れよ。疲れないの?」
「す、すいません、お気遣いありがとうございます」
いや、そうじゃなくて……。
まぁ、この子にとっては断る方がストレスになるのかもしれない。
「もう帰れるのか?送ってってやるよ」
「え、え、そんな、悪いですっ。それに、私、自転車通勤なので……」
「へー、家近いんだ。どこ?」
「えっ、えっと、えーっと、あの……」
聞くと口ごもる相澤。
そんな言いにくい場所なのか。