現代のシンデレラになる方法




そして、やっとのことでできたお弁当。

どうしようか昼休み前に渡さないと、でも……っ

なんて言って渡そう。

てか、若い子ならまだ可愛いけど、私の手作り弁当ってどうなの?

ひくよねー、いい大人が何やってんだって。

あぁ、どうしようやっぱり渡すの辞めようかな。



そう廊下で一人葛藤していると、曲がり角のところでちょうど人とぶつかってしまった。


「きゃっ」

その拍子に手にしていたお弁当が空に舞い、グチャと音を立てて床に落下していった。

床に尻もちをついた私に、ぶつかった相手から声がかかる。


「すいません、大丈夫ですか?」

「いえ、こちらこそすいません」

不注意だったのは私の方で、慌てて謝り返す。

見ると、あまり見かけない医者だ。
しかもまだ若めな。
新しい研修医だろうか。

私と目が合うなりにこっと笑う。
まるで、天使のような笑顔だ。

私より年下っぽい、まだ20台中盤てとこだろうか。

八重歯が特徴的で中世的な顔をしてる。

またこれ女子から人気出そうだなー。

なんて思っていたら、お弁当の存在をすっかり忘れていた。


「中身大丈夫ですか?」

「あっ」

そう言われて、床に落ちたお弁当が目に入る。
中はもうダメだろう。

悲しいけど、これで良かったのかもしれない。

中身を確認すると、案の定ぐちゃぐちゃになっている。

それを隣から覗き込んできた先生が言う。

「これ、もしかして誰かに作ってきたんですか?」

そう、お弁当は先生が恥ずかしくないように男物の包みに入れた。


「え?えぇ、まぁ……」

「あちゃー、これじゃ食べれないですね」

「あ、いいんです。渡そうか迷ってた位なので……」

そう言って隣を見ると、目に入ったのは【東條】というネームプレート。

って、え?
と、東條!?

「もしかして東條先生の弟さんですか?」

「はい、研修で来てるんです。え、もしかしてこれ兄貴に作ったんですか?」

ぎくっとして思わず、目線が泳いでしまう。

なんでこういう時上手く誤魔化せないかな。

いいえ、とは言ったものの彼は信じないだろう。



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