現代のシンデレラになる方法



それから、西原綾子と体の関係を持つようになった。


「なんで、そんなに慣れてねぇの?やる気なくすんだけど」

「うるさい、こっちは二年ぶりなのよ」

「ちょっとは年上だからって期待してたのに」

「だから、教えてって言ったんじゃない」

「だったら少しは楽しませろよ」

「ちょっと、手荒くしないで……っ」


嫌いな兄貴を好きな女をいいようにできるのは、妙な背徳感があって、それはそれで楽しかった。

だけど、こいつの目には兄貴しか映っていない。

回数を重ねるごとに、それをまた身を以て思い知らされる。

別にこの女が好きな訳じゃないが、俺はその目が心底嫌いだった。

だから、いつもできるだけ手酷く抱いた。








しかし、そんな女ばかりに時間を割いてやる訳にはいかない。


さぁ、どうやってあいつにダメージを与えてやろうか。

そんな時、帰り際外科の若いナース達数人から声をかけられた。

「ちょっと、あんた言ってよ!」

「はぁ?なんであたしなの……っ」

そんな押し問答をする彼女達にしびれをきらして、こちらから要件を聞く。


「どうしたんですか?」

「あの先生の歓迎会をしたいなと思って。あの、病棟全体のとかじゃなくて。私達だけで」

「嬉しいです、ありがとうございます」

そう笑顔で応える。

本当は、ちっとも嬉しいなんて思っていないのに。


「わぁー嬉しい。東條先生の弟だから、昴先生も付き合い悪いのかと思ったー」

「兄さんは、あまり誘っても来ないんですか?」


そう問うと看護師たちは顔を見合わせて、渋い顔をする。


「まず来ないよねー」

「この前の食事会は珍しく来てたけど」

「そうそうでもさ、聞いた?あの日先生突然帰ったじゃない、あれ酔った相澤さんを送るためだったとか」

「え、そうなのっ?」

「だって相澤さんが出て行ったあと追うようにすぐ出てったじゃない?」

「怪しいよねー」


目の前で繰り広げられる、女特有の噂話。

しかし、相澤って誰だ。





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