現代のシンデレラになる方法




ちょっと諦めモードに入った中、彼女の甲高い声がお店に響いた。


「え、昴っ!?」

昴がやっと来たのだ。

店の出入り口付近で飲んでいた彼女達。

昴の登場に彼女はまっさきに気付いた。


「理紗子さん……」

ははは、情けない顔しちゃって。

うわ、本当にいたっていう表情してる。


「うわー久しぶりっ。もしかして、ここに来てくれたってことは私に会いに来てくれたってこと?嬉しいなー」

にこにこしながら昴の手を取ると自分達が飲んでいた席に無理やり連れていった。


「理紗子、誰?」

「昔付き合ってた元彼よ」

「随分、若い子と付き合ってたんだなー」

いきなり登場した若いイケメンに、男性達もびっくりだ。


どーれ、どこで出て行こうかしら。

そっちの席の方へ耳を澄ませる。


「ねぇ今、何してんるの?」

「病院で働いてる」

「え、お医者さん?」

「まぁ」

「おぉ、すげー」


そう昴が言うと、席から沸き立つ感嘆の声。

随分大人しいもんだ。


「あの可愛い昴が医者ねー、なんだか感慨深いわ」

「可愛いって、いつ付き合ってたんだよ」

「秘密ー」

昴はほとんど喋らない。

だけど、時折、理紗子という女をぼんやり見つめる瞬間があった。

一体何を考えているんだろうか……。


「ねぇ、最近さー時々体調悪いことがあって。ちょっと相談に乗って欲しいんだけど、連絡先教えてくれない?」

「……いや、」

あーあ、もうはっきり言ってやりなさいよ。

いつもの毒舌はどうしたの?

どんだけそんな女にトラウマ抱えてんのよ。


困ったような表情の昴。

もうだから、そういう顔するからほっとけなくなるんじゃない。


「すいません、ちょっと知り合い見つけちゃって」

「えぇっ?」

「本当すいません、機会がありましたらまたご一緒させて下さい」

微笑みながらそう言うと、そそくさと席を立つ。


「って誰か、あの子の連絡先聞いたか」

「いや」

「何やってんだよ」


彼らの慌てた声を背に舌をぺろっと出す。

簡単には連絡先教えないんだから。



こっそりまた薬指の指輪を外す。

余程、余裕がないのか、未だ私に気付かない昴。

そんな昴にあたかも偶然を装って声をかけた。



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