彼女いない歴が年齢の俺がもうすぐパパになるらしい。



「すげぇな、相変わらずの鉄壁。またあしらわれてんぞ、山岡」
「さすが花嶋先輩だよな。男なのに『高嶺の花』とか言われてるわけだわ」
「かっけぇよ。俺らと別次元の生き物だよ、惚れるわ」
「俺も花嶋先輩みたいに『女になんて興味ない』とか、そういう顔してみたいわ」




山岡の後ろで、いつも山岡がつるんでいる後輩連中の囁きが聞こえてくる。俺を見る目は羨望や憧憬を通り越してもはや崇拝レベルだ。


「先輩、今日だけマジだめっすか?……一度くらい付き合ってくださいよ」


珍しく山岡が食い下がってくる。何故だか俺を慕ってくれているこの後輩は、いつもあの手この手で俺を合コンに連れ出そうとしていた。


「俺の自慢の先輩、紹介してやるってみんなに言っちゃったんスよ」


見捨てられた子犬みたいなしょぼくれた目をされてしまい、さてどう断れば角が立たないかなと悩んでいると。


「ちょっとちょっと山岡くんたち。花嶋先輩困らせないでくれる?」


パーテーションの奥から颯爽とした足取りで総務課の南がやってきた。制服のタイトなスカートからすらりと伸びた、日に焼けていないまっさらな脚が今日も目に眩しい。

「南先輩!」

総務課のアイドルのご登場に後輩どもが急にそわそわしだす。


「もう。前から言ってるでしょ。花嶋先輩はね、合コンごときになんて興味がない人なの。いい加減学びなさいよ。無理やりそんな場所に連れて行ってあたしたちの花嶋先輩を汚したりしたら承知しないわよ?」


南がかわいらしい顔で「分かった?」と睨みつけると、後輩たちは途端にデレデレしだす。美人にはたとえ叱られても嬉しいらしい。

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