赤い電車のあなたへ
わざと?
いったい何のことか、わたしにはわからない。
それでも夏樹の胸に体を預ける格好になり、わたしは体が強張った。
……怖い。
夏樹が怖い。
どうして怒っているの?
どうしてこんなふうにするの?
これから何が起きるの?
夏樹の余裕がない様子もわたしを追い詰め、本能的な恐怖感を増してしまう。
夏樹が何をするのか予想も着かなくって、わたしはギュッと目をつぶり、ただただ体を震わせる。
怖いよ、夏樹。
いつもの夏樹と違う。
厳しくも優しいお兄ちゃんじゃない。
「……鞠……」
夏樹がわたしを呼んだけど、その声にはどうしてか胸が痛くなる響きが含まれてた。
そして夏樹はわたしの肩を抱き寄せ、しばらく躊躇いを見せた後に背中に腕を回して、わたしを抱き寄せた。
「……怖がらないでくれ、鞠」
切なげに囁かれた夏樹の声は、どう理解すればいいの?
夏樹がわたしにこんなふうにするなんて、わたしには理解不能で思考が追いつかないし。意味がわからなかった。