赤い電車のあなたへ



「鞠、おはよー! 良かったねいい天気で」


朝の7時。


待ち合わせた朝露駅の時計台の前に行くと、ほたるが元気よく手を振った。


わたし達は朝露を7時18分に出る普通列車に乗る予定だ。だから、もう龍治さんがいても不思議はないのだけど。


「あれ、そう言えばまだ来てないの?」


わたしは周りを見回してほたるに訊いてみた。


「夏樹のこと? 彼ならまだだけど。鞠一緒に来てないの?」


え、とわたしは虚を突かれた気持ちになる。だって、夏樹は確かにわたしより10分は早く家から出てたのに、まだ待ち合わせ場所に来てないなんて。いったいどうしたんだろう?


「あの、龍治さんとほたるはいつぐらいにここへ?」


わたしが訊ねると、龍治さんが来たのは6時40分。ほたるが来たのは45分らしかった。それなのに夏樹を見てないなんて。
彼はいったいどこへ?


夏樹、あなたは今はどこにいるの?



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