赤い電車のあなたへ
とにかく時間ギリギリまでは夏樹を待ってみよう、ってことになった。
夏樹が立ち寄りそうな近くのお店、ぺんぎん屋を覗いたけど。やっぱりいない。
「あら、鞠ちゃん。どうかした?」
お店番をしてたおばあちゃんの娘の加代子さんに声を掛けられ、事情を話して伝言とメモを頼んだ。もしも夏樹を見かけたら、先に三日湖へ行っていると。
「あの夏樹くんが約束を守らないって珍しいわね。わかった! 見かけたら伝えておくわね」
「はい! すいませんがよろしくお願いします」
わたしはぺこりと頭を下げ、ついでだから清川家にも一度戻ってみた。慌ただしく靴を脱いで上がり、まっすぐ二階の夏樹の部屋を目指す。
「夏樹、いるの?」
声を掛けて襖を開くも、夏樹の影も形もない。わたしの部屋や一階、物置や庭や畑も探し回った。
作業場に行くと、健太おじさんが1人で材木を加工してた。
「ん、どうかしたのかい? 鞠ちゃんはもう時間がないんじゃないか」
のんびりとした叔父さんに夏樹を見てないか訊ねたけど、やっぱり朝食以来見てないらしい。
焦るわたしに、叔父さんは気になることを教えてくれた。
「夏樹はあれでなかなかの激情家でねえ。思い詰めたら突拍子もないことをしちまう事もあるんだ。
だから、鞠ちゃん。夏樹には気をつけなよ。あいつだって男だからね」