赤い電車のあなたへ
「あ、何も心配はないです。ただE線の先を見たいと言い合ってるだけだから」
何も言えないわたしの代わりに、ほたるがフォローする言葉を出してくれた。
「そんな遠くには行かないですし、ちゃんと帰って来ますよ」
ほたるの説明にも、どうしてか夏樹は納得しない顔つきで。
「……なら」
躊躇いもせずに夏樹は言い切った。
「俺が案内する」
「え、でも……家のお手伝いは?」
わたしがそう言ったのは、農作業の手伝いなんかのこと。
わたしは隔週やおじさんから頼まれたら手伝ってるけど、息子である夏樹は毎週末手伝っているはず。人手が必要なこの時期に抜けて良いのかと思う。
「立野に頼むわ。その分日曜に俺が立野んちを手伝えばいいし」
いちばんの親友の名前を出したから、夏樹が本気なんだってわかった。
なら、夏樹が決めた事は絶対にそうなるんだ。
「俺の方が詳しいだろ。橘(たちばな)は東野の出身だしな」
夏樹が指摘したように、ほたるもわたしと同じように朝露高校に進学するため外から来た。だから、わたしと同じように親戚のお世話になりながら通学してる。