金木犀のアリア
本当に!? という気持ちと、はるばる「チャイコフスキー」を聴きにくるという愛しさに少々、複雑な気持ちだ。

詩月の顔をマジマジと見つめて、郁子が悪戯っぼく微笑む。

白い猫が此処に来ると、黒塗りのスタンウェイのグランドピアノを弾く者も他の楽器を演奏する者も居ない? ことに気づく。

「白い猫はチャイコフスキーを聴きに来る」

喫茶店にいる学生の誰もが気づき、認めているのか? 詩月は半信半疑だ。

白い猫はチラリと此方を見て「ミャゥ」と甘えたように一声鳴いた。

詩月は「ねぇ、早く弾いてよ。待ちくたびれそう」と言われた気がして、ヴァイオリンケースから徐にヴァイオリンを取り出し素早く調弦を行い立ち上がり、ピアノの前に進んだ。

「いい子だな」

詩月は、情感を込めて「チャイコフスキーのヴァイオリン曲」を弾いた。

「チャイコフスキー」と言っても白い猫が居る時、弾く曲はヴァイオリン曲OP42ー3「懐かしい土地の思い出、メロディ」と決まっている。

 
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