金木犀のアリア
「俺さ。何度か後をつけたんだけど、此処以外は途中で見失ってしまって行き先がわからないんだ」

「はぁ、バカか? 猫の後をつけた……どんだけ暇なんだよ」

どっと笑いが起こる。

 電車に乗る猫なんて、そうそう居ない。

しかも、真っ白で血統も良さそうだし気品もあり、首にブランド物のスカーフを巻いた目立つ猫だ。

何処かで見かけたら間違う筈もない。

数々の目撃情報は、まんざら嘘ではなさそうだし確かな情報に違いない。

 詩月はてっきり、学園近くの住宅街にある富豪の飼い猫が、気まぐれに飼い主の目を盗み、此処の珈琲の香りと様々な楽器の音色に誘われてやって来るんだろうくらいに思っていた。

学生達の猫情報にただ、唖然とするばかりで溜め息をつく。

「はるばる、電車に乗って『チャイコフスキー』を聴きにくるのよ。甘く切ない1曲を披露してあげたら!?」


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