願望クエスト

「…！」


御崎鮎が後ろを振り向くと、


髪はぼさぼさ、頬はこけ、青白い顔をした男が充血した目玉をギョロギョロさせていた。


「佐月くん…！」


御崎鮎の腕をつかんだのは佐月雅人(さつき まさと)だった。

彼は北高校の生徒で、原愛那の彼氏だった。

「びっくりしたよ…佐月くんだったのね。大丈夫…じゃないね。愛那のこと…何て言っていいか…」


佐月雅人は背が高く、鼻筋のスッと通ったイケメンで、女子からはわりと人気があった。しかし、今はかなり痩せ、別人のように見える。


「御崎さん、愛那と同じクラスだよね。」

「そうだよ…どうかしたの？」

「もしかして願望クエストのこと知ってる…？」


「…！」

御崎鮎は息を飲んだ。

「愛那が死んだのは、そのアプリのせいかもしれない。」


「…ちょっと意味がわからないんですけど…」

御崎鮎は、恋人をなくしたショックで佐月雅人の頭がおかしくなったのだと思った。


「愛那が死ぬ前のこと…聞いてほしいんだ。」