願望クエスト
「それで私が呼ばれたわけね。」

次の日の放課後、御崎鮎は鹿山博美を学校から少し離れたファミレスに呼び出していた。

御崎鮎の隣の席には少し間を開けて頬のこけた佐月雅人が座り、鹿山博美を見つめた。

「願望クエストのこと、知ってること何でもいいから教えてくれ…!」

「佐月くんの力になれればいいんだけど…私、まさかあの噂が愛那の自殺に関係あるなんて思いたくなくて…」

そう言って、鹿山博美は甘いアイスコーヒーの氷をストローでガシャガシャとかき混ぜた。

「二人とも、願望クエストが願い事を叶えてくれるっていう噂があるのは知ってるよね。」

鹿山博美はゆっくりと確認するように喋り始めた。
佐月雅人たちはだまって首を縦に振った。

「その噂には続きがあってさ、願いが叶ったら、3日以内にアプリを消さなきゃいけないんだって。そうしないとノゾミサマに殺されるって…」

御崎鮎は全身にぞわっと鳥肌が立つのを感じた。ちらりと横を見ると、佐月雅人の喉仏がごくりと動くのが見えた。

佐月雅人は口を開いたが、上手く舌が回らないようだった。

「…な、なんだっ…よ、その、ノ、ノ、ノゾミサマって…」

「詳しいことは分からないんだけど、アプリを放置してるとノゾミサマが願望を叶えに来ちゃうんだって…人を殺したいっていう願望を。」


御崎鮎は二の腕の辺りがぞくぞくと寒くなり、目の前がくらくらした。血の気が引いているのを感じた。

「ま、今までこのおまじないみたいなアプリで願いが叶った子なんていなかったし、このアプリに不思議な力があるとは思えないよ。」

空気が凍りついていたのを感じて、鹿山博美は無理に唇の端を上げて言った。

「それにノゾミサマなんて取って付けたみたいな話、誰かがふざけて作ったに違いないよ…」


しばらく三人のテーブルは沈黙が続いた。それぞれがストローでグラスの氷をかき混ぜるガチャガチャという音だけがしていた。
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