ベランダから見える星
「母さんに姉さんを連れて帰るよういわれてきました。」


「はぁ?」


声を上げたのは葵で,顔に『反対』って書いてあるようだった。


お母さんは…私を伺うように見ている。



「勝手に父さんが連れていったからと。
 ヒステリック興して大変ですよ。
 姉さんの成績…あのM学でトップですよね?」


あぁ分かった。


あの人の思惑が。


本当に…私のことを何だと思ってるんだろうか。


まぁ答えは分かりきってるけど。


『帰らない』と返事をしようとした時,



「「帰さない。」」


と低い声が二つ聞こえてきた。


お母さんが私の右手を,葵がさっきより強く私の左手を握った。



「せーちゃんは道具じゃない。」


「そうよ。
 そんな風に思ってる人のところに帰せない。」


『帰らない』今まではそうだったけど,今は違う。


『帰りたくない』んだ。


だってみんなと一緒にいたい。


お母さんに愛情を貰いたい。



「私は帰りたくない。
 お母さん達と一緒にいたいから。」


ギュっと手を握り返し,私は京介から目を逸らさないように頑張った。


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