ベランダから見える星
「でも母さんは姉さんを必要としてるんですよ!?」


「それは必要だろ。
 優秀な子が跡取りのほうが嬉しいもんな?」


葵は皮肉たっぷりの言葉を投げると『せーちゃんの言う事きけ』と自分もしないことをペロッと言った。


流石に居づらくなったのだろう。


京介は不満げな顔をして立ち上がった。


まぁ3対1だし,まだ中学生だろうし…



「京介君。」


「何ですか」


「お父さんにはちゃんと私から伝えるわ。
 連絡先は変わってないでしょう?」


お母さんから出た言葉が意外だったのだろう。


京介は一瞬驚きに満ちた表情をし,何も言わずに帰っていった。


玄関の閉まる音が聞こえ,私は心底安堵した。


やっと帰った…



「静ちゃんよく頑張ったね?」


お母さんに頭をポンポンっとされ,私は張り詰めていた気が緩んだ。


お母さんに寄り掛かり,ゆっくりと何度も呼吸を繰り返す。


『ありがと』と呟くと『私の方こそ』と返ってきた。


なんのことだろう…?


自分の言った言葉を思い出しながら,私は意識を手放した。


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