ベランダから見える星
「やっぱり。
 ということは貴女のせいでこの子は帰ってこようとしないのね…?」


そう言ってニヤッと笑ったあの人は…お母さんに近付き,腕を強く引いた。


やばい,と思ったときにはもうお母さんは相手の手の中。



「お母さんを離して!!」


「あら,あなたが懐くなんて余程素晴らしい人なのね。
 その“お母さん”が大変なことになってもいいの?」


この人精神的におかしいんじゃないだろうか。


なんというか…壊れてる。



「君江っ
 翠を離せ!」


「あら貴方まで。
 愛されちゃっていいわねぇ,翠さん?」


「ありがとう。
 貴女は可哀相ね。
 誰からも愛されなくて。」


何でお母さんはこうなんだろう。


そこで黙っていればいいのに,黙ってられない人。



「うるさいっ
 あんたがいなければこの子は帰ってくるのよ!!」


あの人が手を振り上げた瞬間,私は無意識に動いていた。



パンッ


乾いた音とともに頬に鈍い痛みが走る。


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