トイレ、大至急!
改札を出て、駅前の商店街へ入る。
平日の昼過ぎに、こんなにも人が多いのはなぜだろう。
パチンコ屋も大繁盛。
その自動ドアが開くと、店内の冷気が流れてきて腹に強烈なダメージを与える。
隣りの薬局なんてドアもなく、冷気は垂れ流し。
オレの体調を悪くする薬局!とんでもない薬局だ!
ああ、それにしても道が狭い。放置自転車は毎日撤去してくれないかな。
そして、前のアンタら!‥速く歩きなさいって。
神経が研ぎ澄まされたオレには、行き交う人々の流れがスローに感じる。
それとも単に焦ってるだけだろうか。イヤな汗をかき始めた。
以前、腹痛に耐えかねてパチンコ屋のトイレを借りたことがある。
つまり、我慢の限界に達したら、両脇の店にトイレがいくらでもあるし、
ちっとも問題なんてないのだ。
そう考えると、ちょっと心にゆとりができた。

賑やかな路地をぬけて、線路沿いの道にさしかかる。
この道はまっすぐ伸びて見通しがいい。
右には線路がずーっと、左には大きな製薬会社の塀がずーっと続き、
借りられるトイレは無さそうだ。
‥弱気になってしまうと、腹痛の波が襲ってキター!
歩き続けているとヤバい(漏れそうな)ので、
立ち止まって線路沿いの金網につかまる。
周囲への配慮として、「あれ、知り合いが線路の向こうに?」的な
演技をしておく。
『ぐるるるぅ‥』
すぐにハラ内部の圧力がさがり、警報は鳴り止んだ。
とりあえず波はひいたが、今回の腹痛は思ったより危険かもしれない。
急いで帰らねば。
かいた汗が冷たく感じられるのに、汗は止まらない。
まだ、家までは10分以上かかる。

そうだ、ちょっと走ってみよう。
軽く走るだけでも、速度はかなり違ってくる。
調子のいいうちに家へ近づく努力を怠ってはいけない。
このペースでいけば、3分程、時間は短縮されるはず。
それにしても、なんてひどい悪寒なのだろうか。
とにかく腹を温めたいので、、
シャツが汗で冷たくまとわり付くのをつまんで引き剥がす。
くそ暑いというのに、できるだけ日なたに出て腹を温めているのが情けない。
まあこれで少しでも楽になればいいじゃないか。
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