トイレ、大至急!
家はすぐ側なんだし、いいよね?(漏らしても^^;)
むしろ、無理に我慢するなんて事は体に悪い。
よくやった。本当にがんばったな!

ところが、神はそれすら許さなかった。
「○○くん、こんにちわ」
背後から声をかけられるとは、完全に虚をつかれた。
ぎこちなく引きつった顔で振り返ると
近所に住む『綺麗なお姉さん』がそこにいた。
オレが密かに憧れていている二つ年上の美人で、
そういえば、会話するのは3ヶ月ぶりか。
「なにしてるの?」
この灼熱地獄のなかにあっても、
爽やかな風が通り抜ける高原にいるかのように
なんとも涼しげな表情をしている。
まあ今は、その風すらオレの腹に深刻なダメージを及ぼすのだが
とにかく最悪の場面だ。
ほとんど動けずプルプルしてるし、ちょっと腰がひけてるし、
どこからみてもヤバい奴。
『なにしてるの?』って言われても、我慢してて動けないと答えられるはずもない。
おねえさんはニコニコしながらオレの返事を待っている。
どうしてもうまい言い訳が見つからなくて、変な間ができた。
おねえさんは視線をオレの手元に移した。
「あ、電話かけようとしてた?ごめん、ごめん‥」
そう勘違いされたのだが、即座に合わせてうなずいてみせる。
携帯を手に持っていてよかった。
おねえさんは手を振りながら去って行く。
どうやら向こうもそんなにヒマは無かったらしい。
携帯買って5年、今ほど役に立ったことはなかった‥。

突然の出来事に体もビックリしたのか、
歩ける程度に波は治まった。
この奇跡を決して無駄にはしないようオレはどんどん歩を進める。
徐々に最後の波が近づいているのが分かる。
そして、その波には『太刀打ちできない』ことも分かっている。
だが、もう心配はいらない。
玄関にたどりついて、
階段を上ってトイレの前にたどり着いたのだ。
波は恐ろしい高さで目の前に迫っているが───勝った。オレの勝ちだっ!!
トイレのドアノブに手をかけた時、
走馬灯の様にこれまでの戦いの記憶が蘇った。
すべてが懐かしい思い出として。
ガチャ!
あれ?開かない。そして中から声がする。
「入ってるって!(怒)」
‥‥‥。
真っ白にフェードアウトしていった。(゜д゜)
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