AfterStory~彼女と彼の話~
【佐々原海斗side】

 何とか、初日の出に間に合って良かった。

「綺麗…」

 麻衣は船からの景色に夢中になっていて、連れてきて良かったと思う。

 神社か寺に御詣りに行くことも出来たけど、人混みが嫌いだし。

 普段から漁に出ているから、中々麻衣とも会えなくて、寂しい思いをさせてたから、俺に出来ることは何かを考えて、船を使って朝陽を見ようと決めたのだ。

 こういう事が出来るのは漁師で良かったな。

 種明かしすると楽しみが半減するから、麻衣からの質問には中々答えられなかったのは心苦しいけど、朝陽を見れて本当に良かった。

「海斗さん、ありがとうございます」

 満面の笑みを浮かべる麻衣に、俺は愛しい気持ちになり、唇を重ねた。

 海に出ていたから唇はしょっぱいけれど、それでも麻衣が好きだから、麻衣に触れたくて唇を重ね続ける。

 海から漁船の停泊場に戻る中で、麻衣は太陽に向かって拝んでいるのを見て、俺も口には出さずに心の中で願い事をした。

 停泊場に戻って何をお願いしたのか聞いても、内緒と答える麻衣に俺も内緒だと返す。

 だって、言えないだろ?

『麻衣と仲良く過ごせますように』

 恥ずかしくて言えないから、ずっと黙っていよう。

「いつか教えて下さいね」
「いつかな」

 いつかあんたに言う時は、きっと未来を含んだ言い方にすると思うから、今は内緒だ。

 俺は内に秘めた想いを口には出さずに、麻衣の手を握り歩きだした。


【佐々原海斗side 終わり】


終わり
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