AfterStory~彼女と彼の話~
のんびりと広場を眺めていたら、4歳くらいの男の子が1人で泣きながら歩いていたのが見えた。

「迷子かな?あの子の所に行ってみない?」
「ああ」

猫を籠に入れて、私たちは男の子の側に駆け寄って、男の子と同じ視線になるようにしゃがんだ。

「僕、1人?」
「…ママと…、えぐっ…うわぁぁ」
「もう大丈夫だから、私たちと一緒に探そうね」

私は男の子をあやすようにそっと抱きしめて、背中を優しく叩く。

「近くに交番がないか連絡してみる」
「お願い」

彰はスマホを取り出して近くの所轄に連絡し、交番の警官が到着するまで男の子と待つことにした。

「ママ…、何処に行っちゃったの?」
「もうすぐだから、頑張ろうね」
「ひっぐっ…、ぐず…」

男の子をあやすけれど、なかなか泣き止まなくて戸惑ってしまう。

今まで生活安全課では大人や未成年たちを相手にしていたから、子供との対応はしたことがなくて、どうすれば男の子は落ち着いてくれるかな。

私が戸惑っていると、彰が男の子の側にきて両肩に手を置いた。

「泣くな。お前の母さんだって、お前を探して必死になってる」
「でも…、グズ……」
「泣いた顔を見せたら、母さんだって泣くぞ。男なら母さんを泣かせないで、笑顔にするんだ」
「彰…」

男の子にとっては彰の言葉が厳しさを含んでしまっているように聞こえるかもしれないけれど、私のように優しさだけじゃなく、真っ直ぐ語りかけるのも大切なことなんだと感じた。

男の子は洋服の袖で涙を吹いて、彰の顔をじぃっと見る。

「僕、お母さんが好きだから、もう泣かない!」
「それでこそ男だ」

彰と男の子は肩車したり、じゃれあっているのを見て、何だか妬けちゃうなぁ。

やがて交番の警官が女性と共に私たちの所に来て、男の子は無事にその女性と帰っていったのを2人で手を繋いで見送った。

「俺たちも帰るか」
「そうだね、帰ろう」

私たちは猫と一緒に車に乗り込んだ。
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