AfterStory~彼女と彼の話~

├九条麻衣✕佐々原海斗の場合

side九条麻衣

週末の土曜、電車に揺られながらもうすぐ海斗さんに会えるのが楽しみで、口元がニヤけちゃう。

お泊まりセットが入ったボストンバックを膝の上に乗せ、スマホのメッセージ画面を見て、海斗さんの顔を浮かべた。

『麻衣と桜を見たい』

このメッセージをくれたのはこの前の火曜日で、一生懸命に仕事をし、前日の金曜の夜に帰宅した時はふらふらだったけど、何とか気力を振り絞ってお泊まりセットを準備をし、当日を迎えた。

宇ノ島駅に着くとやっぱり観光客が多く、天気もすごく良いから絶好のお花見日和だよね。

この宇ノ島付近にも桜が見れる場所があるのかな?大きな神社辺りにありそうだし、海斗さんと見れるのが楽しみでしょうがないし、ヒデ子お婆ちゃんやヨシハラのお爺さんも元気かなと思いながら、海斗さん達の実家に向けて歩く。

玄関をとんとんと叩くと開いて海斗さんが出てきて、奥からはヒデ子お婆ちゃんがニコッと微笑んで私達の所にきた。

「麻衣ちゃんは元気だった?岳もどう?」
「お互い元気で、姫川編集長も相変わらずです」
「兄ちゃんは心配しなくても平気だろ」

ヒデ子お婆ちゃんはいつも気にかけてくれているけど、相変わらず海斗さんはお兄さんである姫川編集長に厳しい。

海斗さんが私のボストンバックを持ち、すたすたと歩いて部屋に向かうので私は靴を脱いで後を続いて入ると、海斗さんがボストンバックを畳に置いて、私の方に振り返り抱きしめる。

「海斗さん?」
「やっと会えたのに、兄ちゃんの名前は聞きたくない」

海斗さんの抱きしめる腕の力が増し、久しぶりの抱擁がいつもと違う。

「いつも側で仕事をしている兄ちゃんが羨ましくなる」
「私は海斗さんとこの家で過ごせるヒデ子お婆ちゃんや、海斗さんと漁に出ている皆さんが羨ましいですよ」
「そうか?おっさんばかりで、汗臭いし、しんどいぞ」
「姫川編集長の言い方を週五聞くだけでも辛いですよ?」
「確かに兄ちゃんは煩そうだ」

2人で笑い、良かった、いつも私に見せる海斗さんに戻っていった。

「久しぶりに会えたのに、嫉妬をみせてすまん」
「いいえ。今日と明日はいっぱい海斗さんと過ごせるので、気にしてないです」
「まぁ俺もー…」

海斗さんは私の右耳に顔を寄せる。

「夜はあんたを存分に楽しむ」
「ー!ー」

私の右耳に海斗さんの熱い息と言葉が触れ、顔が一気に赤くなるし、海斗さんはクスっと笑い、もう…。

「婆ちゃんが美味しい煮魚を張り切って作ったから、茶の間に行くぞ」
「はい!」

海斗さんと手を繋ぎ、お茶の間に向かい、ヒデ子お婆ちゃんと海斗さんが用意をしてくれた美味しい料理に感動するし、お箸が止まらない。

「美味しすぎて、幸せです」
「婆ちゃんの煮魚は俺が作るより美味しい」
「2人共、嬉しいわ。海斗もいつも漁で捕れたお魚を分けてくれて、ありがとね」
「皆、婆ちゃんの事が好きだから率先して分けてくれる」
「漁師の皆さんもお元気そうですね」
「引退なんてまだしないって言ってたな」

さっきまで汗臭いし、しんどいって言ってたのに、今は何処か嬉しいそうに話す海斗さんって素直じゃないな。

「花見は明日行くから、婆ちゃんにお土産を買ってくる」
「良いのかい?」
「俺がそうしたいし、楽しみにして」

海斗さんが味噌汁を一気に飲み、お造りをバクッと食べ、久しぶりの3人の食事を楽しんだ。
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