AfterStory~彼女と彼の話~
side荒木仁

「綺麗…、本当に綺麗です」

俺の隣にいる宝条さんは目をキラキラさせて、目の前の水槽達を眺める。

そう、俺が宝条さんをここに連れてきた場所は角井百貨店が期間限定で開催した『金魚✕桜の饗宴〜桜花爛漫〜』というイベントで、水槽の中に大小様々な金魚が優雅に泳ぎ、水槽の背後には桜の絵が描かれいて、金魚が桜の中を泳いでいる様に見えるのだ。

昨日、宝条さんに花見の人の多さが苦手だと話した時に、残念な表情をさせてしまった事を反省し、何か出来ることはないか、取材の昼食中にスマホで調べまくって、このイベントを見つけ、宝条さんの宿題に紙束の最後のページにお出かけの誘いを書いたのだった。

今の時間は夜で人もそこまで多くなく、照明も暗いから落ち着いて見れそうだし、普段は熱帯魚を飼っているが金魚も良いな。

宝条さんは中くらいの金魚鉢の側にいき、じぃと金魚を眺め、スマホを取り出して写真を撮る。

「この金魚の尾鰭が他の金魚と違って大きですね」

俺は少し屈んで宝条さんの顔の側に自分の顔を寄せて、金魚をじぃとみると確かに長いな。熱帯魚とは全然違う大きさだし、生態の奥深さを関心していると、宝条さんは俺の方を見て固まっている。

「あ…」

前にカメラの下見でもそうだったように、顔が近すぎて、その時はお互い顔を赤らめていたな。

「ご免」
「い、いえ…」

お互いパッと距離を取り、俺はコホンと咳払いをして宝条さんの右手を握り、また歩き出す。

様々な形をした金魚鉢は天井からの照明と桜の絵が相まって、こういう形で桜を楽しむのが良いな。

そしてまた暗幕をくぐって進むと、とてもお大きな金魚鉢と、その周りにも金魚鉢や水柱、いや、円柱も水槽になっていて金魚が泳いでいて、更に天井の照明が桜の様な色を照らしていて、2人でその景色に圧倒される。

「あの、荒木さん」
「ん?」
「今日のこの景色、ずっと忘れません」
「俺も」

2人で手をギュッと握り、大きな金魚鉢の側に行くと、小さな金魚がいれば、桜色の照明に照らされた金魚達が目の前を泳ぎ、まるで桜の花びらが舞っているみたいだ。

また宝条さんがスマホを取り出して、大きな金魚鉢を撮る。

「綺麗」

俺は宝条さんの顔をみると、宝条さんは目を潤ませているから、俺は人がいない円柱の所に宝条さんを連れていき、その柱の後ろにある壁に宝条さんの背中をつけて自分のバックを手放すと、宝条さんの顔の横にそれぞれ手をついて逃れないようにした。

「荒木さん?」
「宝条さんの方が綺麗」

俺が顔を近づけようとすると、宝条さんは焦った表情をする。

「ここ、人がいます」
「みんな、金魚に夢中だから見てない」
「で…」

“も”という言葉は俺の唇で塞ぎ、桜の光に包まれながらキスを続け、唇を離すと宝条さんをそっと抱きしめる。

「あのさ…」
「はい」
「一緒に帰って、もっと宝条さんに触れたい」
「……い」

宝条さんは俺の白シャツに顔を埋め、小さな声で返事をし、俺達は角井百貨店を出て、タクシーでシェアハウスに帰り、俺の部屋に入り、また唇を重ねながらベットになだれ込み、丁寧に宝条さんの服を脱がせ、俺も白シャツのボタンを素早く外し、お互い肌を寄せ合う。

「駄…、荒…さ…」
「まだ」

俺は宝条さんをうつ伏せにすると、背中に唇を寄せて小さな音を出しながら赤い花を咲かせていく。

それを宝条さんの背中から首にかけて咲かせ、右側の首筋には強く吸い上げて赤い花をつけ、沢山触れ合った。

お互い意識が果て、暫くして目を覚ますと宝条さんが俺の腕の中でムスッとした顔で俺を見上げている。

「機嫌、直して」
「こんな痕をつけるなんて、明日のお花見の服装を考え直さないといけないじゃないですか!」
「俺は気にしないけど」

宝条さんの首筋に咲いている赤い花を指でゆっくりなぞると、宝条さんはもっと頬を膨らませて体を反対にした。

「悪い」
「知りません!」

本当に拗ねてるな…、俺は目の前の宝条さんの背中に咲いている赤い花にそっと唇で触れ、舌でゆっくりとなぞると、宝条さんの体がビクッとする。

その反応、もっと俺自身をその気にさせるのに気づいてないなと思い、宝条さんの体を手でグイッと自分の方に向かせて、俺は体を起こして宝条さんを見下ろした。

「明日の花見が終わったら、駅で待ち合わせて“一緒に帰ろう”?」
「遅れない様にします」
「ああ、俺も遅れない様にする」

顔を近付けて、一緒に帰る約束のキスを沢山した。

真琴✕仁の場合Fin

2026/04/02



→では、四つ葉のお花見はどうなったのでしょうか?
これは秋山君目線でお楽しみ下さい 作者より
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