AfterStory~彼女と彼の話~

├愛を込めて(九条麻衣side)

【九条麻衣side】

愛情、たっぷり込めてます。



私が勤務している四つ葉出版社のバレンタインとホワイトデーは、他の会社とは変わっているかもしれない。

まずバレンタインデーの場合、専務の高坂さんの発案で福利厚生費から上司に3000円の金額が支給され、部下がチョコレートを購入し、お昼休みに広い会議室に持ち込んで"チョコバイキング"を行う。

部署毎にチョコを選ぶので、自分では買ったことのないの食べられるのが密かな楽しみだ。

そしてホワイトデーの場合、これも高坂さん発案で"ホテルの最上階でデザートバイキングを食べ尽くす"をするのだけど、女性社員は料金無料で男性社員がお金を出しあうから、女性社員の出席率ほぼ100%の一大イベントになっている。

入社2年目のホワイトデーの時に、何で無料なのか、ファッション部の水瀬編集長に聞いたことがある。

「お返しを部署毎に贔屓しちゃ駄目でしょ?って言ってたし、確かにお返しに悩む時があるから、俺も高坂さんの発案には賛成してるよ。じゃあバレンタインも皆で食べようって、会社のお金で食べられるのってラッキーだよね」

と言いながら、水瀬編集長はお皿一杯に乗ったミニケーキを食べていたのを思い出した。

そして入社してから6年目になろうとする2月、今年もバレンタインデーがやってくる。

部署毎にチョコレートを用意するって言ってたけど、私が異動する前のタウン情報部はチョコレートをどうしていたのかな。

 (タウン情報部は姫川編集長しか居なかった時期があるけど、もしかして姫川編集長が買いに行っていたとか?!)

今回は私が買いにいくとして、それとは別にバレンタインチョコを渡したい人がいる。

その人は私と出会ったあの海で、今日も一生懸命に働いているのだ。

 (海斗さんに渡せるといいな)
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