AfterStory~彼女と彼の話~
映画館の客席は300席程あり、私たちは中央エリアの後ろの部分の席を選んだ。

「席が前過ぎると見上げて首が痛くなるから、席を後ろにしたんだけど大丈夫?」
「私は後ろの方が見やすいから、大丈夫です。何か飲み物と食べる物を買いますか?」
「そうだね」

私たちは席に荷物を置いて売店に向かい、私はホットミルクティ、幸雄さんはホットコーヒーを選ぶ。

「ポップコーンか、スナック菓子のどちらを選ぼうかな」

ポップコーンは塩味かキャラメルソースがかかっている物で、スナック菓子は三角形でコーン味になっている。

スナック菓子だと食べた時に細かく欠片が落ちちゃうから、ポップコーンが妥当かな。

「幸雄さんはどれにしますか?」
「そうだなぁ、塩味がいいかな」
「了解です」

私は塩味のポップコーンを買い、飲み物と一緒に席に戻って、ミルクティーをカップスタンドに置いて、席に座ろうと荷物を持とうとしたら、チョコとネクタイが入った袋が無いことに気付く。

 (嘘っ…、何処にもない)

椅子の下も探してみたけれど袋は無くて、血の気がさぁっと引いてきた。

「美空、どうした?」
「えっと…、その…」

チョコとネクタイのことはサプライズで渡したいから、ここで話しちゃうとその意味がないけど、どうしようか口ごもる。

「何かあったのなら正直に話して欲しい」
「幸雄さん…」

真剣な表情で見つめる幸雄さんに、私は正直に話すことにした。

「実は―…」
「先ずは映画館の人に話してみよう」
「はい…」

私は幸雄さんと一緒に客席を離れ、映画館の受付に向かう。

「せっかく映画を観ようとして、こんな風になってごめんなさい」

私は落ち込みながら歩くと、幸雄さんは繋いだ手を離して、手を私の腰に回して見上げる。

「大丈夫。美空の大切な物はすぐ見つかるって」

幸雄さんが見上げながらニコッと微笑んで元気づけてくれるから、鼻の奥がツンとなって、泣くのを堪えるのに必死になる。
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