星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

16.ピアノコンクール -託実-



「百花ちゃん、次に逢えるのは多分、
 11月3日かな。

 雪貴のピアノコンクールがあるんだ。

 雪貴を教えてくれてるのは、
 唯香ちゃんだから……」


Takaの秘密は、
百花ちゃんには今も内緒のまま。

それでも少しでもきっかけを作りだして、
雪貴と唯香ちゃんを利用して、
約束を取り付ける。


「託実さん、雪貴って?

 あの唯香にちょっかい出してた教え子って言うのは
 私も知ってます。

 その子と託実さんはどんな関係なんですか?」


着替え終わった百花ちゃんが、
ベッドに腰掛けながら問いかける。



「親友の弟だよ。

 ほらっ、前に百花ちゃんの絵を購入した時に
 親友の部屋に飾りたいって話しただろ。

 雪貴は親友の弟なんだ。

 今も入院して意識が回復しない親友の代わりに、
 俺も応援に行く予定なんだ。

 だから良かったら、
 唯香ちゃんと一緒にアイツを応援しに来てやってよ」
 



雪貴が今のTakaだとは言えない。

全てが真実ではないけど、
雪貴が隆雪の弟であるのは確かだから……。


嘘ではないにしろ、
今も百花には内緒にしないといけないAnsyalの秘め事。



「わかりました。
 
 だったら何としてでも唯香を捕まえて、
 私も押しかけますね。

 今度は11月3日ですね。
 お会いできるの楽しみにしています」

「あぁ、俺も楽しみにしてる。
 画廊まで送ってくよ」



百花ちゃんと一緒にホテルを後にして、
俺は通う慣れた彼女の職場へと送り届ける。


そのまま自宅には戻らずに、
隆雪の眠る病院へと足を向けた。


守衛さんに挨拶をして、
いつもの様にアイツの眠る病室へと向かう。


馴染みにスタッフさんに会釈をしながら、
アイツの病室をノックして部屋に入ると、
先客がアイツのベッドに持たれるように眠ってた。
< 112 / 253 >

この作品をシェア

pagetop