星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
「アタシは、久良木凛華。
Rikkaって名前で、モデル活動してる。
この家の主、託実くんとは直接関係ないから安心して。
アタシは、託実君の兄貴代わり。
託実君の従兄弟の伊舎堂裕真【いさどう ゆうま】の彼女ってことで。
で、アタシもわけわかんないまま
裕真に頼まれて、此処にお邪魔したんだけどアンタは?」
相変わらず口調はテキパキ、サバサバ。
だけどその話し方は、威圧感とかの怖さを感じるものじゃなくて
かえって私が話しやすいように、場を和ませてくれてる気がして。
「喜多川百花。
百花で大丈夫です」
「そっか、百花って言うんだ。
じゃ、宜しく。
ベッドから出たら寒いでしょ。
あっち、リビングはエアコン入ってるから
あったかいし、向こう行こうか。
託実君の部屋、散策してお茶のある場所はわかったから。
なんか飲みながら、少し話そっか」
そう言うとRikkaは、
隣の部屋へと移動した。
大きなTVが壁側にかかって、
沢山のスピーカーが四方に置かれている部屋。
家具らしきものは、
お酒が並んでる棚と、DVDなどが置かれている棚。
ゆったりとした豪華なソファ-に、
ガラステーブル。
託実のマンションだとは知りながらも、
過ごしなれない空間は、少し落ち着かない。
眠っていた寝室らしい場所から、
隣の部屋に移動すると、私はソファーの隅っこに腰を下ろす。
Rikkaと二人、ソファーに座って話すのは
ファッション関係の話。
本当は、凄く自分の殻に閉じこもってしまいたくて
外と関わりをとることを遠慮したい心境なんだけど
それを許さない感じの、Rikkaの口調。
サバサバと問いかけてくるけれど、
深刻にならずに、明るい雰囲気を、
和める空間を必死に作ろうとしてくれてるのが何となくわかった。
多分……私より年下の感じがするRikka。
そんなRikkaに私が気を使わせてるのかなって思ったら、
なんだか情けなくなった。
お茶を飲みながら、30分くらい他愛のない話題で言葉を交わすと
私は「もう一度休むから」と、Rikkaに告げて
最初、眠っていたあの部屋へと戻った。
Rikkaが嫌いなわけじゃない。
だけど今の精神状態の私に、
知らない人の相手は、正直キツイよ。
託実も託実だよ……。
ほっといてくれたらいいのに。