星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



百花へ

少し出掛けてくる。

ここは俺の家だから
ゆっくりしてるといいよ。

帰ってきたら、
これからのことを話し合おう。


百花一人だと不安になるかもしれないから、
部屋の中に、裕真兄さんの恋人がいる。

凛華【りっか】さんって言う名前らしい。
俺も今日初対面。


託実








託実と綴られた手紙。



私が知ってる託実は、
お姉ちゃんの大好きだった恋人の託実しか思いつかず、
手紙の綴られたメモ帳を握りしめながらも、
目から涙がポロポロと零れ落ちる。



お姉ちゃんに託実を取られて悔しいから?

それとも……託実の家に来られたことが
嬉しいから?

託実が今も私を心配してくれてることが
嬉しいから?





溢れる涙の原因は今の私にはわからない。



だけど……今、私がいる場所が
託実のマンションだってことはわかった。


そしてこのマンションには、
凛華と言う女性が存在してるってこと。


メモからして、託実の知り合いの裕真さんって人の彼女らしいけど
私が知らない人が存在してるのは確かだった。



「ねぇ、部屋から灯りが零れてるけど
 起きてるの?」


女の子の声が聴こえる。


「あっ……えっと、目が覚めてしまって
 ここが何処かようやくわかったとこです」

「んじゃ、開けるわよ」


そんな声が聴こえて、ドアが開けられると
姿を見せたのは、雑誌でよく見かけるオレンジ色っぽい髪が特徴の
モデルのRikka。


「あっ……Rikka」


思わず初対面なのにモデル名で呟く。

凛華ってRikkaのことだったの?



私も洋服のデザインをするのが趣味だから、
一通り、いろんな雑誌は愛読してる。


「アンタ、アタシのこと知ってるんだ。
 ってことは、アタシもそこそこ有名みたいだね」


サバサバっとした口調の物言いで、
私に話しかけてくる、雑誌の中の女性。
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