星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】
★
百花へ
少し出掛けてくる。
ここは俺の家だから
ゆっくりしてるといいよ。
帰ってきたら、
これからのことを話し合おう。
百花一人だと不安になるかもしれないから、
部屋の中に、裕真兄さんの恋人がいる。
凛華【りっか】さんって言う名前らしい。
俺も今日初対面。
託実
★
託実と綴られた手紙。
私が知ってる託実は、
お姉ちゃんの大好きだった恋人の託実しか思いつかず、
手紙の綴られたメモ帳を握りしめながらも、
目から涙がポロポロと零れ落ちる。
お姉ちゃんに託実を取られて悔しいから?
それとも……託実の家に来られたことが
嬉しいから?
託実が今も私を心配してくれてることが
嬉しいから?
溢れる涙の原因は今の私にはわからない。
だけど……今、私がいる場所が
託実のマンションだってことはわかった。
そしてこのマンションには、
凛華と言う女性が存在してるってこと。
メモからして、託実の知り合いの裕真さんって人の彼女らしいけど
私が知らない人が存在してるのは確かだった。
「ねぇ、部屋から灯りが零れてるけど
起きてるの?」
女の子の声が聴こえる。
「あっ……えっと、目が覚めてしまって
ここが何処かようやくわかったとこです」
「んじゃ、開けるわよ」
そんな声が聴こえて、ドアが開けられると
姿を見せたのは、雑誌でよく見かけるオレンジ色っぽい髪が特徴の
モデルのRikka。
「あっ……Rikka」
思わず初対面なのにモデル名で呟く。
凛華ってRikkaのことだったの?
私も洋服のデザインをするのが趣味だから、
一通り、いろんな雑誌は愛読してる。
「アンタ、アタシのこと知ってるんだ。
ってことは、アタシもそこそこ有名みたいだね」
サバサバっとした口調の物言いで、
私に話しかけてくる、雑誌の中の女性。