星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

24.生まれ変わる音 -託実-



交通事故にあい、救急車で運ばれてきた百花は
裕真兄さんたち医療スタッフによって、
手術室の中へと吸い込まれていった。


俺の傍に残った、裕兄さんによって連れられて行ったのは
通称、役員棟と呼ばれている関係者のみが
立ち入ることが出来る病院内の建物の最上階。



「託実」



最上階の一室に顔を出した俺を迎え入れたのは、
親父とおふくろ。

そして裕兄さん、裕真兄さんの両親になる
政成伯父さんと恋華伯母さん。

四人に迎えられて、その部屋の中に入室する
俺と裕兄さん。



「託実、先ほど満永夫妻に連絡をして
 お詫びしておいた。

 その前に、確認しておきたいことがある。
 託実は、喜多川百花さんとどんな関係なんだ?」

「裕くんから連絡を貰って、お父さんもお母さんも心配したのよ」



入室した途端に、問われる両親からの問いかけ。



「宗成、薫子さん。
 そう託実くんを責めるように問いただすんじゃないよ。

 託実くんも、もう大人なんだから
 親に内緒で恋人が居てもいい年頃だろ」

「そうよ。

 宗成さんも、薫子さんも落ち着かれて。

 託実くん、裕。
 お二人もお座りなさい。

 お茶入れてくるわね」


そう言って助け船を出してくれた、伯父さんと伯母さんの声に導かれるように
俺は裕兄さんと一緒に空いているソファーへと腰をおろした。



「百花と……出逢ったのは、何時だったかな。
 思い出したのは、理佳が亡くなった日に出逢ってたってことなんだけど、
 そんな記憶、取り戻すまでは覚えてなくて。

 だから多分、Ansyalを結成して、ファンとしてLIVEハウスに
 何度も来てくれるうちに、惹かれていったんだ。

 最初は理佳に似てたから。 
 気になって仕方なくなった。

 進展したのは去年かな。
 ほらっ、母さんが喜多川の画廊教えてくれただろ」

「あぁ、隆雪君の病室に絵を飾りたいって託実が言った時ね」

「あの時、あの場所で働いてた百花を見つけたんだ。
 ただのファンだった百花が、少しずつ俺の中で変わってた。

 香港から帰ってきたら、喜多川会長に許可を貰って
 何度か一緒に出掛けた。

 百花に惹かれてはいたけど、それまでは理佳の妹だって知らなかった。

 理佳の妹だってわかった途端に、俺自身がわからなくなった。
 それと同時に、百花と逢うことも出来なくなった。

 仕事が忙しくなったからさ。

 だけどこの間、理佳のお墓で見つけたんだ。
 ボロボロになって苦しんでる百花を見つけた時、
 理佳を抜きにしても守ってやりたいって、幸せにしてやりたいって思った。

 とりあえずマンション連れて帰って、親父たちに連絡するの何か詮索されそうで嫌だったから
 裕真兄さんに連絡して、百花の処置して貰った。

 その後、裕真兄さん彼女いたんだな。

 凛華さんって人が、百花ずっと見てくれて、
 その間に、俺もケジメつけたくて理佳の居た病室で俺自身と向き合ってた」




途中、テーブルに運んでくれた紅茶のティーカップに手を伸ばしながら、
親父たちの前で百花との時間を話す。



「託実、託実は百花さんと……理佳ちゃんと結婚を前提に考えてるって
 ことでいいのかい?」


親父の問いかけに、俺は黙って頷いた。


「あらっ、だったらアナタ、満永夫妻にも喜多川会長にも
 正式に話を通さないと。

 義兄さんたちは、仲人を引き受けてくださるかしら?」


仲人って……おふくろ話し早すぎるだろう。


「私たちは大歓迎よね、政成さん。
 甥っ子が結婚するなんて素敵じゃなくて?

 なら……百花さんの病室は、伊舎堂の特別室で宜しいわね」

恋華伯母さんが言葉を続ける。

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