星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

3.未来絵図 -託実-


百花が目覚めて約一ヶ月。

宝珠姉と相談しつつ、仕事を増やしながら
俺自身の未来絵図を描き始める。


現時点では、百花の退院はまだ決まらない。


だけど百花の退院が決まった時、
俺はどうしたい?

そのビジョンを明確に描きたい。
そんな風に思う様になってきた。


その日、久しぶりに裕真兄さんに呼び出されて
何時ものホテルへと向かう。


百花との逢瀬にも使っていた
行きつけの伊舎堂グループのホテル。


スタジオでの作業を終えて、
愛車に乗ってホテルへと向かうと、
総支配人が丁重に出迎えてくれる。


「託実さま、お待ちしておりました。
 総帥は最上階にいらっしゃます」


第一線では医師として実力を磨いている裕真兄さんは、
伊舎堂の財閥においての、総帥と呼ばれる立場。

このホテルも裕真兄さんが頂点に存在している。


「有難う」


総支配人の案内で最上階の役員室へと向かうと、
窓際のテーブルで、夜のイルミネーションを眺めながら
ティータイムを楽しむ裕真兄さん。

その隣には、百花を理佳のお墓から連れ帰った
あの時に一緒に居た、凛華さんの姿が確認できた。


「裕真さま、託実さまをお連れしました」

ゆっくりと声をかけてお辞儀をした総支配人は、
そのまま二人の元へ俺を促す。


「遅くなりました。
 凛華さんも百花がそのせつはお世話になりました。
 慌ただしく、お礼も遅れてすいません」

そう言いながらお辞儀する。

「別にアタシはいいわよ。

 託実君が大変だったのは裕真から聞いて知ってるし。
 守秘義務って言うので詳しくは教えて貰えないけど、
 順調だってことだけは裕真から聞いてるから。

 それだけでアタシは充分。
 百花とはファッションの話で、盛り上がりそうだったから
 良かったらまたあわせてよ。

 お見舞いとかも行こうかなーって思ってたんだけど、
 ほらっ関係者専用でしょ。

 あの役員棟って建物、アタシ嫌いだからさ」


そう言って俺を迎えた凛華さんは、
テーブルに並んだケーキをフォークで口元に運ぶ。
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