星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



十夜のソロから始まってTakaのピアノが
優しく流れる。


そのピアノを包み込むように祈のギターが交わって、
憲のどっしりとしたドラムが空に響いて託実のベースを
全てを包み込むように支えていく。




『幸せになろう』



そんな託実の想いがぎっしりと詰まった、
とても優しく満たされた空間。




そんなメッセージを体いっぱいで感じながら、
私は託実見つめ続けていた。





結婚式と披露宴の最後。

ブーケトスで、
私が投げた花束を受け取ったのは唯香。


予定通り。


今度は、唯香。
貴女と雪貴くんの番だからね。



そんなメッセージを込めて。



慌ただしい結婚式の一日は、その後も二次会まで続いて
ようやく幕をおろした。


翌朝、唯香と雪貴くんに大変な記事が出回るなんて、
その時の私は全く思わなかった。

次の日、新聞や雑誌に出る大きな文字。

TVをつけると、誰が撮影したののか
私たちの結婚式の会場で、隠し撮りされたと思われる写真が紙面を賑わせていた。


雪貴くんと唯香があの会場で抱き合っていた写真。

その写真は、[AnsyalのTakaを誑かせた【たぶらかせた】音楽教師]として
唯香のことを好き放題掲載していた。



私が起きた頃には、すでに事態の収集に動き回りはじめたのか
託実のメモが【事務所に行って来る。唯香ちゃんと雪貴の件は任せて】が
テーブルの上に残されていた。

だけと私だって、何も出来ないわけじゃない。


そうなった場合、学校側としては一度は唯香を学校業務から遠ざけるかもしれない。
これ以上、騒ぎにしないために。

そう思った私は慌てて着替えを済ませて、唯香を迎えに行こうと車を走らせる。


その記事が何時に出回ってるのかはわからないけど、
もうお昼になろうとしている頃。

唯香は学校よりも、唯香のマンションって言うのがいいかも知れない。
だけど……唯香のマンションは、一部のファンには筒抜け。

筒抜けってことは、マスコミも当然いるかもしれない。


Ansyalのメンバーが唯香を迎えに行くより、私が一番適任。


託実の携帯に『唯香を迎えに行きます』っとメールを送信すると、
私はすぐに唯香の自宅へと走らせた。

案の定、マンションの入り口の前、
唯香は身を潜めるようにして様子をうかがっている。

携帯を取り出して唯香に連絡すると、
唯香を自分の車へと誘導した。
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