星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】

とりあえずセキュリティーが一番安心な、我が家へと連れ帰ると
唯香はTVを付けて食い入るように視線を向ける。


「唯……、そんなの見るのやめなよ」


そう言って、私がリモコンの電源を消すと唯香は力なく呟く。


「雪貴、大丈夫かな?」

「雪貴なら大丈夫。

 トパジオスが守るわよ。
 後は、クリスタルも。

 今、託実は社長さんに呼び出されて
 対策考えに行ってるから」


唯香にそんな声をかけながら、
私は託実たちを信じるしか出来なかった。

精神的に不安定な唯香の傍で、
唯香を支えるように同じ時間を過ごす。


翌日、唯香は学院の理事会により呼び出された。


託実にその旨を伝えると、
託実は『兄さんたちに任せておけばいいよ。後、明日の夜、緊急で記者会見をする。
俺たちの結婚もその場で報告するから』っと私に告げて電話を切る。


次の日、朝から私は唯香に武装用のメイクを施す。
私からの精一杯の応援の意味を込めて。




そこから先、私の出番はない。
だけど……きっと皆が唯香を守ってくれる。


自宅で見守ったAnsyalの記者会見。

その場所で、託実は私たちの結婚を報告し、
雪貴は唯香を守るために、カーディアンとして記者会見を頑張ってた。


そんな時、託実から一本の連絡が入る。

そこには唯香が倒れたことを伝えられた。

一人だったら、その場で唯香の元に駆けつける私も
今は違う。

私たちの周囲には、
沢山の人の絆を感じることが出来るから。

携帯を取り出し、唯香の番号を呼び出すと暫くして
唯香の声が聞こえた。

「もしもし」

「唯香、託実から聞いた。

 倒れたって言ったけど、落ち着いた?
 そこに裕兄さまいるんでしょう?」

「うん。

 今日は無理しちゃだめだよって
 言われたけど……」

「うん、あたりまえよ。
 Ansyalの記者会見、見たわよね。

 雪貴幸せにできるのは、唯香しかいないし、唯香を幸せにできるのも
 雪貴しかいないんだから。

 何があっても手放さないのよ」


私が伝えられるメッセージはただ一つ。


次に幸せになるのは、
唯香以外有り得ないのだから。



すべての事件を終息させて迎えた神前悧羅学院祭。


生徒たちに受け入れられて学院祭での
Ansyalの演奏を楽しんだ唯香は凄く幸せそうな笑顔を見せていたと
ステージから二人を見守っていた託実は後で教えてくれた。


学院祭の後、再び留学先へと戻った雪貴くん。


だけど今回のことで、唯香もわかったよね。

Ansyalのメンバーたちの力強い絆を。
神前悧羅の卒業生たちの絆を。


だから大丈夫。
皆と一緒に、雪貴くんが帰ってくる日を待とう。


時間は止まることはないのだから……
どんなに苦しくても明けない夜はない。


その言葉に嘘偽りはないのだと今は思えるから。
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