星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



喜多川百花ちゃん。




姿を見た途端に重なるビジョン。




百花ちゃんが一瞬、理佳と重なって見える。



思わず手を伸ばして『理佳』と紡いだ口形。


伸ばした手を我先に触ろうと群がるファンの子たち。



体制が崩れる。


思わず、体制を崩した俺を
支えようと百花だけは
飛び込んでくるものの支え切れず、
百花の上に重なるように倒れこむ。



一斉に輪が離れていく。




「託実?」



実夜が慌てて駆けつけてくる。


体を起こして、百花に手を伸ばして、
支え起こすと周囲を見渡す。


ファンたちが
遠巻きに見ていた。




「実夜(みや)さん、大丈夫。
 俺がよろけただけだ。

 連日、徹夜続きだったからさ。

 彼女、怪我してたら困るから少し連れて行くよ」





力を込めて百花ちゃんをグイっと引き寄せると、
姫抱っこにして、その場所を後にする。


戸惑った表情の彼女は
俺の方を不安そうに見つめていた。



ファンが次々と
俺の通り道を開いてくれる。




空港医務室に連れて行こうとした
俺に彼女が

「託実さん。
 私……大丈夫ですから」

っと告げた。




彼女を近くのソファーに
ゆっくりと抱き下ろす。



「本当に?」



ソファーに座った彼女は、
ゆっくりと目を伏せて微笑んだ。



「託実さん、寝不足なんですか?

 飛行機の中で眠れたらいいですね。

 私も凄く、興奮して昨日は眠れなかったんです。

100万ドルの夜景。
 
 争奪戦、勝ちあがりますから」


彼女は、にっこりと微笑んだ。
 

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