愛してるの伝え方

「わぁ、雅浴衣似合うね。可愛い!」

「ありがとうございます。藤岡さんの甚平も素敵ですよ」

屋台が近付くにつれて、どんどん人は増えていく。
今は前列と後列に分かれ、前列では瀬戸くんと橋本くんが話していた。

「…藤岡さん」

「ん?」

「瀬戸くん、怒ってると思いますか?」

「怒ってるって…もしかして、雅に?」

頷くと藤岡さんは笑い出した。

「な、なんで笑うんですか」

「やっぱ雅可愛いね。
瀬戸が雅に怒るわけないじゃん。
でも気になるなら、ちょっと声かけてみなよ。すぐ元に戻るよ?」

「そんなので戻りますかね?」

藤岡さんは背中を押してきた。元気づけるような、ポンポンじゃなくて、思いっきり。
私はその勢いで前によろめく。

そして、そのまま瀬戸くんの背中にぶつかってしまった。

< 15 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop