愛してるの伝え方

「瀬戸くん」

「……」

瀬戸くんは振り返ることもなく進み続ける。
黙ったまま。私の袖を引いて。
私の歩幅に合わせてくれているのは彼の優しさなのだろう。



ピタリと、急に止まった。

「…ミヤちゃん。ごめんね」

そう言いながら振り向いた瀬戸くんは、困ったように笑っていて。

……謝られるようなことあったっけ?

「中学の友達でしょ?
俺、勝手に断わっちゃった」

「…あぁ。あの人達のことですか。
構わないですよ、全然。むしろ断わってくれて感謝してます」

「本当に? 怒ってない?
いつもの優しさじゃなくて?」

「本当です。
……たいして仲良くなかったんで」

むしろ悪かった。そう思ったけど、彼女たちを紹介するのも面倒だし、伏せておいた。

「私も…はぐれてしまって、すいませんでした。いつもはほとんど一人なので、誰かと歩くのは慣れないんです」

「別にいいよ。どこにいたって探し出してみせるしね!」

「こんな人混みで探し出すなんて無謀過ぎません?」

「大丈夫大丈夫。
…ただ、やっぱり心配するから、あんまりはぐれないでほしいけど」

彼はそう言いながら私の頭をポンポンと撫でた。

< 26 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop