無理して笑うな


そんな俺を見て薫ちゃんが笑みを消した。




「どうだ、今の気持ちは。」




今までになく真剣な顔をした薫ちゃんに、俺は息を切らしながら言った。




「めっちゃ気持ちいいです。なんか、清々しいというか…」




「そうだ、その気持ちだ。

なんか自分の限界を超えた気がしないか?俺はそれを感じて欲しかったんだ!」




薫ちゃんは嬉しそうにそう言うと俺から面接試験用紙を取り、『三島 薫』の横の〝印〟にハンコを押してくれた。




「俺の面接結構厳しかっただろう?だが芸能界はもっと厳しい場所だぞ。心してかかれよ。」




「はい、ありがとうございます。」




俺はガラガラの声でお礼を言って面接試験用紙を受け取った。




その他の面接官達も、普通の面接とは違うだろうことを要求してきた。



事務の上田さんは「俺を笑わせろ」と言い、社長秘書の向井さんは「バク転してくれ」と言った。



1番苦労したのは薫ちゃんと同じマネージャーの神崎さんだった。




「君、流星君と同じ私立高校だったよね?あそこはなかなかの進学校じゃないか!

頭も良くてかっこいいなんて不公平だよねぇ。」




そう言いながら神崎さんが差し出したのは数学の問題が書かれた紙だった。




「面接がまわってきたときのために用意してるんだ。内容は中学生までの知識で解けるよ。」




それは複雑に図が絡みあった、俺の苦手な問題。



それにどう見たって中学生が解ける問題だとは思わない。



俺はじーっと問題用紙を眺めていた。




「中学生の問題っていうのは、複雑な公式なんかがない代わりにあたまのひらめきが要求されるからね。」




神崎さんは俺にシャーペンと消しゴムだけ与えるとさっさと仕事に戻った。




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