無理して笑うな

〈唯said〉

「RedStars芸能プロダクションの藤崎 ミナと申します。この前は顔合わせに参加出来なくて申し訳ありませんでした。

今日から美玲として一生懸命頑張ります!」




ミナがそう言って頭を下げると周りから拍手が起こる。



ミナが顔をあげ、あたしは笑ってみせる。




「じゃあ、いきなり途中からで悪いけど今日は先生と、陸の親友和史。この2人の会話シーンから!」




監督の声で教室内のようにセットされた中に役者2人が出て行き、撮影機材の用意が開始される。



今日どの場面を撮影するかは元々知らせれていて、関係のある人しか集まってはいない。



この後は桜と陸が2人で入学式に行くシーンがあるから来たものの、和史役の俳優さんは新人のようで少し時間がかかりそうだった。




「唯、何か飲み物買ってくるわ。何がいい?」



「あ、あたし行きますよ。」




栗田さんのその声にあたしは慌てて立ち上がった。



栗田さんはBlueSkyみんなのマネージャーなのに、あたしのドラマに付き合ってくれてる。




こんなことまでさせるわけにはいかない




「あら、じゃあお願い。あたしこれ片付けなきゃなのよ。」




栗田さんは携帯を持って言った。



栗田さんにはBlueSkyやメンバー個人に対するメールや電話が頻繁に入ってくる。



それを片付けるのも立派な仕事だった。



あたしは立ち上がって部屋を出た。



歩きながらなんとなく携帯を開くと、



『今日は直前まで撮影が入るから、それが終わったらすぐに行く! 拓真』




あたしもついさっきまで仕事が入ってて、ここまで急いで走ってきた。




「忙しいのはいいことだよね。」




曲がると自動販売機がある角にたどり着いたとき、あたしは誰かとぶつかりそうになった。



ゆっくり歩いていたからぶつからずにすみ、あたしはその人が通り過ぎるのを待った。



でもその人はその場から動こうとしない。



不思議に思って顔を上げようとしたそのとき、




「…唯…」




あたしはその声に目を見開く。



昔より声変わりして少し低くなったけど、聞けば分かる。




「唯だよな?」




あたしは止まっていた頭をゆっくり持ち上げる。




「…なんでここにいるの?」




そこにはあたしより全然背が高い悠斗が、少し見下ろす感じであたしを見ていた。




「…説明しだすと長くなるんだよなぁ。」




悠斗は頭をかきながら、少し笑った。




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