無理して笑うな

「…い。唯!!」




撮影を抜け出して楽屋に戻り、うたた寝していたあたしを誰かが起こしに来たようだ。



あたしが目を開けると、そこには怒った表情の蓮がいた。




「撮影中に寝るなんて。この頃疲れてるんじゃない?」




表情は怒っているけど静かな口調と目はあたしを心配してくれている。




「だいじょーぶ!ちょっとぼーっとしてただけだから」




いつものように笑って見せると、あたしは撮影に戻ろうと立ち上がった。



でも、突然蓮に腕を掴まれた。



驚いて振り返ると、蓮は心配そうにあたしを覗き込む。




「だいじょーぶ!じゃねーよ。なんで泣いてんだよ。」




泣いてなんか…



頬に手を当てて指先が涙の流れた後を認めると、言葉は自然に引っ込んだ。



うつむいてため息をつく




「昔から蓮には叶わないなぁ」




「6年もお前の友達やってんだ。それぐらい分かるよ。」




理由を聞かせろとばかりに蓮はあたしの腕を掴んだまま上下に降った。





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