無理して笑うな
「夢、見た。」
「夢?」
あたしは頷く。
「昔幼馴染みにブスって言われたときの夢。」
「あぁ。」
蓮はため息をついた。
「前もそんなこと言ってなかったっけ。いい加減許してやれよ。」
「嫌、絶対に嫌。もっと有名になって見返してやるんだから。」
蓮はそんなことを笑顔で言うあたしを呆れた目で見つめると、腕をひいて歩き始めた。
そのまま楽屋をでると撮影スタジオの前を通り過ぎた。
「蓮!?通り過ぎちゃったよ!」
「そんなこと分かってるよ。
そんな顔で撮影する気か?そんな真っ赤に腫れた目で??」
確かにこんな顔で撮影するなんて、ファンの人達に迷惑だ。
蓮は黙り込んだあたしをいいことに、すれ違ったBlueSkyのマネージャーである栗田さんに「ちょっと出かけてきます」と声をかけた。
栗田さんは「早めに帰って来るのよ〜」と呑気に返している。
「蓮、今外に出たら大騒ぎなっちゃうよ。」
「だいじょーぶだよ。
裏から出たらいいし、飯食べに行くぐらいどうってことないだろ。」