無理して笑うな

あたし達はそれから誰ともすれ違わずに裏口から外に出た。



でもそこにはもちろん出待ちのファンがいるわけで




「なんでここにも!」




そう言いたくなる蓮の気持ちはいたいほど分かった。



出待ちの人達の数はデビューから日にちがたつごとにだんだんと増えて来ていて



あたし達が表から出ることが少ないことを分かっているファンの人達は、6つある裏口のどれかに賭けて立っているのだ。




「3番出口は知る人ぞ知るって感じだから少ないと思ったんだけどなぁ。」




…確かに、他よりは少ない…か??



そんな気がしなくもないが、軽く30人は越える人々がBlueSkyのグッズやサイン色紙、あたし達に渡すプレゼントなどを持って興奮したように話している。




あたし達は1度中に戻ると変装して表口に向かった。



そこは芸能人だけではないいろんな人が出入りしているため、変装していればバレることはほとんどない。



蓮はあたしの腕を掴んだまま人混みの中を直進した。



その中にはBlueSkyだけではなく、他のアイドルや芸能人の出待ちも数多くいて人でごった返していた。




「ふぅ、やっと出れたな。」




蓮はすぐ横の公園まで来るとやっとあたしの腕を離した。



外はもう晩ご飯どきで帰る途中のサラリーマンやこれから食べに行くだろう家族ずれが数多くいる。




「じゃあいつもの所いくか。」




蓮はあたしが頷いたのを見て笑顔で歩き始めた。



いつものとことはあたしのお兄ちゃん、弘樹が開いている店のことだ。



高校を出てすぐに出したお兄ちゃんの飲食店はBlueSkyが開店当初から何度も通っていたため口コミで大人気になった。



お兄ちゃんは大学にも通っているため、今はお父さんの弟の大介さんが店を手伝っている。





< 20 / 135 >

この作品をシェア

pagetop